慢性腎不全をもたらす原因は、腎炎や糖尿病だけではありません。高血圧症や血液疾患、遺伝子異常…など、病因は多岐にわたります。それによって微妙に手続きの方法が変わります。
◆「原因不明」の腎不全
原因不明の腎不全の場合、医師から病因を告知されていないケースと、原因が本当にわからないケースの2つがあります。医師から告知されていない場合は「腎炎」または「腎炎疑い」である場合が多く、原因が本当にわからない場合は「原因不詳」のまま治療が行われています。
障害年金の審査では、このようなケースについて、原因を特定するようにとまでは言いません。この場合、単純に腎機能低下で初めて医師にかかった日を初診日とし、それに応じて認定を行っています。病因がある場合、初診日の特定が複雑になりがちですが、原因不明の場合は初診日が明快で、障害年金の手続きがスムーズに進む傾向にあります。
◆「高血圧症」による腎不全
高血圧症から腎不全となった場合、初診日の扱いに注意が必要です。障害年金の制度では、高血圧症と腎不全は因果関係がないものとしており、高血圧症の初診日を提示しても受給を認めてくれません。この場合、高血圧症の治療を行っている過程の中で、クレアチニンの数値が異常を示すなど腎機能低下が認められた日が初診日となります。初診日の医証をとるときは、高血圧症の初診日ではなく、腎機能の低下が認められた日の記載をお願いしてください。
◆「血液疾患」による腎不全
血液疾患から腎不全にいたった場合は、血液疾患と腎不全のあいだに因果関係があるかどうかが問われます。因果関係がある場合は、初診日は血液疾患として初めて医師の診断を受けた日となります。血液疾患の場合、健康診断で血液の異常を指摘されるケースが多いので、健康診断を受けた日が初診日となることも少なくありません。
血液疾患と腎不全が、因果関係があるかどうかは、治療を行っている医師の判断にゆだねられますので、障害年金の
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申請をするときは、医師に血液疾患と腎不全との因果関係を聞き、因果関係がある場合は、受診状況等証明書などにそのことを記入してもらうようにしましょう。
◆「遺伝子異常」と腎不全
遺伝子異常により腎不全となった場合は、遺伝子異常で初めて医師の診断を受けた日が初診日となります。ここでは、説明をわかりやすくするため、遺伝子異常の例としてミトコンドリア病をとりあげます。
まず、ミトコンドリア病の場合、すぐに傷病名が確定するわけではありません。最初は何らかの身体異常があり、内科などにかかっています。その後、しばらくしてから原因究明のため大きな病院で遺伝子検査が行われ、ミトコンドリア病と傷病名がつけられます。この場合、ミトコンドリア病と傷病名がつけられた日ではなく、その前から通院していた内科の初診日が、障害年金の初診日となります。当初はミトコンドリア病と傷病名がついていないため初診日の医証をとっても、その資料だけでは遺伝子異常による受診だったかどうかがわかりません。そこでミトコンドリア病と確定診断されたときのカルテの写しなどを添え、病気の流れ、因果関係を証明していかなければなりません。このように遺伝子異常の場合、申請が複雑になりがちですので、制度をきちんと理解し、そのうえで慎重に手続きを進めていく必要があります。
◆「腎臓移植後」の腎不全
腎臓移植をしたことによりいったん腎機能が正常に戻ったものの、数年後にふたたび悪化して人工透析にいたる…というケースがあります。障害年金の審査では、移植の場合、初診日を個別に判断していくこととしていますが、腎疾患の場合、原則として移植前の初診日で認定することとしています。具体的には移植前に、腎疾患として初めて医師の診断を受けた日が初診日となります。移植前の腎疾患として初めて医師の診断を受けた日となると、数十年前のこととなることも珍しくありません。その頃のカルテが残っている可能性は低く、初診日の特定に苦慮するケースが多くみられます。しかし初診日を特定しない限り、障害年金の受給は認められませんので、身体障害者手帳のカルテの写しなど客観的資料を集めることに力を注ぎたいものです。
◆人工透析と障害年金の関係 |
人工透析+経過良好→障害年金2級になる!
人工透析+経過不良→障害年金1級の可能性も!
人工透析+別障害→障害年金1級の可能性も! |
※検査成績(クレアチニンなどの数値)が一定の基準を超え、日常生活に
制限を強いられていた場合は、人工透析を施行していなくても1〜3級
に認定されます。 |
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